昨年度よりZEHプランナーに登録していますが、創エネのハードルで引っ掛かり、なかなか実現に至りません。
そこで、社内のバックデータとして、ZEHモデルを2題作成してみました。何年も前に完成したものを使って、断熱等級の確認をかねつつ、ZEHのシミュレーションです。
4~7地域の昨年度平均データ
環境イニシアチブより、ZEH関連の冊子が届き、それによると昨年度は
ZEH(補助金55万)の平均値 … UA値0.50W/㎡・K、太陽光発電6.0kW
ZEH+(補助金100万)の平均値 … UA値0.43W/㎡・K、太陽光発電6.9kW
ちなみに6地域の HEAT20でカテゴライズするUA値は、
G1…0.56W/㎡・K G2…0.46W/㎡・K
ZEHはどうやらG2に近い断熱性能を持たないと実現しないようです。
ZEHが普及しない理由
6地域では「G2を実現するには、内断熱である充填断熱と外断熱を組合わせた付加断熱でなければ難しい」というのが定説になっています。
付加断熱を実践する人たちは「たいしてお金はかからない」と仰いますが、明らかにひと手間増えるので、1工程だけで済む充填断熱のほうが安いです。
しかしながら、経済設計をしている人たちは
「ZEH ≒ G2 ≒ 付加断熱 ≒ コストアップ」
の図式が 頭の中に出来上がっているのが現実だと思います。
また上のような太陽光発電が6~7kW 必要となると、敷地の狭い都内ではなかなか難しいように思います。
まず、統計は床面積を考慮しない平均値ですから、床面積あたりのkW数に変換したほうが正しく理解しやすいです。フラット35のデータから南関東・注文住宅・最多戸数の110㎡で 平均床面積を110㎡()を分母にすると、以下になります。
ZEHの場合の平均太陽光W数 床面積1㎡当たり0.055 kW
ZEH+の場合の平均太陽光W数 床面積1㎡当たり 0.063 kW
このZEHビルダー・プランナーの平均値を物差しとして、
弊社ではどのくらいの数値になるか感触を得たい、夏休みの自由課題よろしく、弊社で過去に設計した物件を使って シミュレーションを行うことにしました。
CASE1:シンプルな直方体(6地域)
東西にすぐ隣家があり、その面の開口は小さくしか取れなかった住宅です。
ZEH+のスペックが出ました。UA値は0.46ですが、付加断熱はやっていません。熱橋に強く気密フィルム不要になる厚みのウレタン吹付の充填断熱です。開口が少ないことも熱損失の少なさに役立っています。太陽光発電は4.8kW(床面積あたりは0.038kW/㎡)で済んでいます。同じ床面積にZEH平均を計算しなおすと3.2kWも違います。
CASE2:L字型の外皮面積がやや多目(6地域)
敷地が広く庭を楽しみたいケースだったので、L字型で設計しました。外皮面積が大きいのがどのくらい影響するか試しました。
このケースでもZEH+のスペックが出ました。 UA値は0.47。断熱はCASE1と同様、ウレタン吹付の充填断熱です。サッシは断熱最上位の樹脂サッシやLowEトリプルガラスは使わず、一世代旧式の樹脂+アルミの複合サッシ、LowE複層です。最先端サッシが売れ筋になってきたおかげで大分お値打ち価格です。
太陽光発電4.8kW(床面積あたりは0.048kW/㎡)と、㎡当たりのワット数がCASE1よりは高めでした。それでも同じ床面積にZEH平均より1.5kW 少ないです。
ZEHに持っていくために、ウレタン吹付はメーカーが出している商品固有の物性データ、サッシも自己適合宣言書を使っています。
所感
現段階のZEHはほとんどがハウスメーカーなので、ZEH時の太陽光発電の平均値も彼らに引っ張られていることが判りました。
太陽光発電が2例とも4.8kW載せることになりましたが、都内の敷地では通常の切妻・寄棟では4kW以上載せるのは厳しいことが多々あると思います。そういうときは、できるだけ緩勾配にして。北向きの屋根にも載せることを考えていいのではないでしょうか?北向きでも発電率が極端に落ちることは無いからです。参考までに、北向きで30度勾配で発電効率70%取れます。(ホームズ君ZEHのヘルプページより)
大きな屋根面積を取れる場合でも、1kWでも減らせば30万節約しますので無駄に太陽光パネルを載せないのが賢明です。
また、サッシや断熱材については、自己適合宣言書やメーカーの公式データを引っ張り出して使っていけば、従来に近い工事費でいけることが判ってきました。
丁寧な設計をすれば、ZEHの敷居は決して高くないです。