スケルトンリノベはやることがいっぱいです。

既存は外壁が木の羽目板であり断熱材無しだったので極めて軽いのに対し、断熱材を充填し構造面材を入れて通気層+サイディングとしたので、外壁荷重がだいぶ増えます。屋根も東西で瓦葺とトタン葺きが半々だったものを、全体スレート葺にし太陽光パネルを南側に載せたので、荷重バランスも全然変わります。

既存建物の構造を評価する「上部構造評点」算出のために耐震診断ソフトを動かし、大規模改修をしても 既存の梁 のままで大丈夫かどうかを新築用の構造ソフトを動かすという設計手法となりました。

新築用構造ソフトで梁せいを当たると、かなりの梁がサイズ不足となりました。そのための補強材をどういうサイズにするか1本ずつチェックするために、「ヤマベの耐震改修」を参考に、表計算ソフトでオリジナル算定ツールをつくったのが下の画像です。

構造ソフトで算定された必要梁サイズと既存の梁サイズを入れ、補強する時の梁幅を入れれば梁せいが自動的に出ます。許容曲げ応力度の高いベイマツの場合もつくっておきました。今後、ヒノキの場合もあるので追加できるように計算根拠も入れておきました。

2階で4.5m超えのスパンを飛ばしている梁を受けている柱が1階では陸立ち(おかだち)になっていました。クリープを起こして窓の中央部分がはっきり下がっています。

せいが3㎝足りなかったのですが、必要な断面係数から既存の分を引くとベイマツで10.22㎝必要でした。たった3㎝の不足が何故そんなに?と思うかもしれませんが、梁が一つだったら梁せいの2乗で断面係数(許容応力に直結)が上がりますが、あくまで2つの梁なので断面係数は足し算をしなくてはいけないのです。つまり「2,3㎝不足なら、ま、いっか」といえない大きな問題なのです。

計算式では10.22㎝と出たので規格寸の10.5㎝を採用。2段梁の注意点としては、常に上下の梁に按分して2階の荷重がかかってこないといけません。もし梁同士が緊結されていなかったら、先に上の梁が中央で下がって下の梁の中央に集中荷重をかけて、下の梁はさらに大きく下がる恐れが出てくるからです。

60㎝間隔でフラットプレートを上下の梁をまたぐように入れ、2階の荷重が均等に伝わるようにしています。

次に瓦が載っていたところの小屋組みです。

小屋梁が2.73mのスパンに直径12㎝の丸太梁です。梁が湾曲しています。

丸太の場合は1.6㎝せいが足りないだけで、ベイマツで9.5㎝必要でした。

計算上は丸太が湾曲しているので、面で補強材と接することができず、圧縮用に57~68㎝間隔の屋根束の下に束を入れ引張用に12Φの貫通ボルトで緊結しました。また、ツールでは補強サイズが9.5㎝でOKとなりましたが、写真左端の梁にビス止めの羽子板ボルトを取り付ける関係で12㎝の梁せいとしました。

このツールを使ったのは丁度10本で、大活躍しました。
改修でなくても、意匠上、梁せいを変えたい時は結構あります。構造ソフトは1本だけ梁せいを変える場合でも、すべて再計算するので時間がかかっていました。この計算ツールは、簡単に同じ強度の梁を求めることができ重宝しそうです。