どの建築家に頼むか、あるいは、どの工務店・メーカーに依頼するか、皆さんが真っ先に知りたい情報は、その会社の標準的な坪単価だと思います。

ところが中々見えてこない。大手メーカーは、物件数の多さから坪単価の情報がローンサイトや掲示板方式のサイトで見かけたりしますが、その情報を信用していいのかイマイチ不安だったりすると思います。

なかなか核心にたどり着かない理由の一つに、多くのハウスメーカーは建築工事(あるいは本体工事)と付帯工事に分けていることが挙げられると思います。
その付帯工事というのがくせ者で、各社でその範囲がちょっとずつ違うようです。

安さを売りにしているメーカーほど、付帯工事に含まれる範囲が広いように思われます。メーカーは、付帯工事はお客様の条件によって差が大きいので、営業担当は 建築工事(あるいは本体工事) のみで一旦お話をするのだと思います。ちゃんと説明はされているでしょうが、それが巡り巡って、付帯工事を含む含まないが注釈されず坪単価だけ独り歩きする、そんな図式もあるように思われます。

では、付帯工事とは何か。

建築以外という意味で外構や地盤改良工事がまずあります。
それから、多くのメーカーさんで空調・換気工事、電気工事、給排水工事も指すようです。会社によってはユニットバスやキッチンも付帯工事の方に仕分けします。
地域によって排水方式が違う、水道の取り出し工事も敷地と道路の関係で変わる、のような個別解は判るとして、設備工事一式を本体とは分けているのは、何故なのか、ちょっと不明です。外野から見ると本体工事といわれる部分を安く見せたいという意志が働いているように見えます。

さて、我々が付きあっている工務店はというと、ハウスメーカーと比較されるという理由で、付帯工事という項目をつくって、上記の分けかたに近いやり方をするところもあります。一方で、お財布は一つなのだからと、付帯とは言わずに建築と並列で各設備工事を仕分けしてくれるところも多いです。

そんな事情なので、弊社設計で工事見積にチェックをする時、付帯という項目はまったく気にしていません。気にしたところで、まとめてお客様がお支払いすることに変わりはないからです。

一方、設計契約に至る前の「御社設計の住宅の坪単価は?」の問いかけはよくあるので、以下の 個別解で発生したものを除いて坪単価(の帯域や平均額など)をお知らせしています。

メーカー風にいえば「付帯工事」といったところでしょう。でも、かなり絞った「付帯工事」 です。

地盤改良工事…敷地によって地耐力がまちまちであり、改良の有無もその方法もまちまち、比較するにものではないから。

水道取り出し工事…接道する道路のどこに水道本管があるか、敷地によってまちまちだから。

エレベーター工事…住宅に導入しないことが多いので、これを入れてしまうと、他の物件との比較には使えないから。

外構・植栽工事…外構は、建主の希望によって開きが大きいので。

建築家によっても、坪単価の算定方法はまちまちなので、複数の建築家に問い合わせをするときは、その坪単価に含まれている(いない)工事を聞いておいた方がよいと思います。それと分母の面積の取り方も確認した方が良いです。吹抜や屋根のかかるポーチ、場合によってはバルコニーも含んだ施工床を分母にしていると、分母が大きいので一見コスパの良い建物に見えるからです。
弊社では、法床※を分母にしているので、吹抜の割合が大きいと坪単価は高めに出がちです。
※法床…建築基準法上の床面積という意味で、「容積対象床面積」ではありません。