古い建物をどのようにリノベするか、コストによって決まる部分は多くありますが、構造だけはしっかりしないといけない。その心構えを持って、山辺豊彦先生の「ヤマベの耐震改修」と日本建築防災協会の「木造住宅の耐震補強の実務」を交互に見ながら、1カ所ずつ補強方法を決めていきます。

私は家づくり学校・特別構造ゼミで山辺先生のスタッフとして働いているので、先生の考えかたが大分身についています。(理論は先生の考えを踏襲しつつ、施工の簡単なやり方はないか模索するために他の資料も読みあさっている状況です)

山辺先生の本を見てとても参考になっているのは、梁下に補強梁を入れる時の梁サイズの考え方。

山辺先生が本の中で、「重ね梁」に念入りな補強をして性能実験をするも、重ね梁と同じせいの1本の梁の断面2次モーメントには到底及ばないことが紹介されています。(ヤマベの木構造p195)
ということは、補強用の梁は既存と念入りに緊結しても人件費の無駄なので、梁が横並びしているのと同様のはりせいを算出するのが良かろうとなります。横並びは、それを受ける柱も必要になるので、やはり重ねたほうが正解。その際、上の梁と下の梁は各々のせいに応じてバラバラにたわむので、ある程度は拘束したほうが良いことになります。

今回のスケルトンリノベは、既存の板張りから耐火性能のあるサイデイング、屋根に太陽光を載せるので、半世紀前に大工さんの勘で架けられた梁ではせいが足りません。必要な梁せいとその断面係数を求め、既存梁の断面係数を引いたものが補強梁の最小断面係数ということになります。

やり方がわかれば、新築用のソフトで梁せいを算出、既存の梁せいを実測しているので、それらを計算式に当てはめていけば1本1本の補強梁のサイズが出てくることになります。

ということで、セルの中に計算式を組込み、「必要な梁サイズ」「既存の梁サイズ」を入力すれば、「補強梁」のサイズが算出されるエクセルツールを作りました。

スケルトンリノベには極めて便利なツールであり、無駄な梁補強がなく、信頼性の高い補強設計になっています。