工事はもうすぐ内装に入ろうとしているので、若干遡る話をします。
この建物の構造的特徴の一つに、主屋に接続する関係で、アスペクト比が構造上かなり不利である、というのがあります。
建物の幅に比べて、極端に高さがある、背高のっぽということです。
間口が3ⅿ少ししかないのに、2階屋上のテラスに上るための階段室があるので、かなりのノッポ。

台風時の屋根の変形を極力抑えたいと考え、火打ち金物を頬杖に使いました。木造住宅のスケールで頬杖は珍しいと思いますがが、ウッドショックのまっただ中で梁せいをできるだけ抑え、かつ変形を抑えるのに有効だったので、迷わずの選択です。
また、長さ6m弱の通し柱の上に階段室があるのですが、階段室の柱は材長の関係で通し柱を延長するわけにはいかず軒桁で分断されてしまいます。通常、通し柱は軒桁の梁とHD金物で緊結する片引きタイプにするのですが、ここでは、軒桁を貫通させ、階段室の柱と緊結する両引きタイプにして、柱の一体化を図りました。

プレカットチェックの時期に軸組模型を作り、柱・梁の継手位置も忠実に再現していました。そこで、小屋組みは2階までの構造体に乗っかかるだけの一般的な構法はそぐわないと確信することとなりました。
模型でも、 指で押すとどこが弱いか 判るのです。 たかが模型かというと、されど模型なのです。

模型はスチレンボードを切り出したもの、耐震壁はトレーシングペーパーです。単体ではひ弱な部材を組合わせて強い構造体をつくるのがミソです。そして、判断する力加減はというと、耐震超級2(基準法×1.25倍)の軸組模型をよく作っているので、それと同じくらいの力加減で押してみるのです。そのぐらつきの差で判断します。力はアナログですが、弱いところは正確に判ります。N値計算では出てこない場所でも、資料をあさって妥当な金物補強をしたり、梁せいをもう一度、個別計算で確かめるなどします。