Vol. 5 「心変わりも悪くない」 2006.10.24
これは住宅設計での話です。
家を建てるにあたっては、誰でも色々な希望を持っています。でも多くの場合、その希望はぼんやりとした「イメージ」や「言葉」だと思います。私達の仕事は、その希望について話を聞き、形にしていくことだと言えるでしょう。
設計がスタートすると、初め「イメージ」や「言葉」でしかなかったことが、図面や模型のように「形」に表現されます。それを見て、「うん、イメージ通り!」ということもあれば、「ちょっと違うなあ…。」ということもあるでしょう。
設計作業の「言葉」を「形」に変換する過程では、言葉の解釈によってはたどり着く「形」が異なってきます。
また、その「形」から感じるイメージも、人によって違いま
す。したがって、イメージ通りでない案が出てきても、何も
不思議なことではありません。
ここで、最初の案がイメージ通りでなかったときの話。
その案に見切りをつけて新しい提案を待つのもいいです
が、でもその前にちょっと立ち止まって、その図面や模型
を見直してみてください。案外、捨てたものじゃないんで
す。今まで自分が想像しなかったようなアイデアが盛り
込まれていたり、新たな魅力を感じたりと、新発見があっ
たりします。(私達も、何か良いとこ
ろがあるからこそ提案
しているので…!)
その新発見、あっさり切り捨てるには、惜しいと思いませ
んか?
「これに、当初の希望のこれをミックスできないか?」とか
「この部分は好みではないから、他の提案をして欲しい。」
といった感じに、自分好みにアレンジしていくことで、納得・
満足の家ができることもあります。
当初抱いていたイメージとは違うのかもしれませんが、心変わりも悪くはありません。大切なのは、ご自分が気に入るかどうかなのです。
私達の方も、自分達の案や考えに固執するつもりはなく、建主さんの思いにフィットする提案をするために、色々な発想ができるよう、柔らかい頭を持ちたいと考えています。
建築主と建築家のコミュニケーションを通じて、時には予想外の展開もしながら、設計案が熟していく…これは、私達の仕事の醍醐味なのかもしれません。
白崎治代
写真:(上)提案のイメージを伝えるために、模型を制作.(下)完成写真
Vol. 4 「家具を置いて考える」 2006.07.24
住宅を設計するときは、図面の中に家具を書き込んで考えています。
(と、エラそうに書くほど特別のことではないのですが…)
希望の家具が入るスペースが確保できているか、家具が通路をふさいでいないか確認するため、また、窓や照明の位置を決める手がかりにするなど、ごく当たり前の目的もあるのですが、私にとっては、「住宅の中に入り込むイメージづくり」のためという部分が大きいです。
自分自身がそこにいるとしたら、どんな空間が居心地いいのか、想像しながら設計しているのです。ソファに座ったら、ここに窓が欲しい、テレビはここ、ソファの前が通路になってしまっては落ち着かない、逆に、外の景色がいいこのポジションにソファを置きたい…などなど、こんな調子です。
家具を書き込むことで、自分の周りにできる空間が実感できるわけです。
設計の進め方は人によって違うのですが、私の場合は、このように中にいる人(=自分)の周りから考えていくので、どちらかと言えば、「建物の内部からの発想」という傾向が強いようです。
ただし、これはあくまでも設計のスタートのときで、内部のイメージが見え
てくると、内部・外部を並行して進めて、最終的には家全体のイメージを
固めていきます。
とくに私の場合は、「外部からの発想」タイプの夫とパートナーシップで設
計しているので、設計が進んでくると、内部・外部に関わらず、必ず設計
バトルが繰り広げられます。
一貫して言えるのは、常に「そこにいる人」が見るはずの景色や気分を気
にしながら設計している、ということであり、意識の共有のためにすり合せ
を行なっているということです。
白崎治代
写真:設計の初期から想定していたソファ.背面の壁の幅や飾り棚の位置もソファに合わせている.